人類の罪と勇気の記憶120年。映像の世紀コンサート2019に行ってきました

NHKスペシャル『映像の世紀』『新・映像の世紀』のドキュメンタリー番組シリーズ。テーマ曲の加古隆さん&オーケストラ生演奏のコンサートがあって行ってきました。感想です。

フランスのリュミエール兄弟が、映像をこの世に送り出したのが1895年。だいたい120年前です。世界で初めて、列車がこちらに向かってくる映像を初めて目にした観客たちは、接近してくる列車にひかれそうだと逃げまどったとか。

1995年に放送された『映像の世紀』、2015年の『新・映像の世紀』で淡々と紹介されたのは、文章より絵より写真より、まるでその場に居合わせたかのように追体験できる、人類の歩みの歴史、膨大な記録映像の数々です。

なにげない人々のふれあいや日常風景もあれば、技術の進歩の輝かしい面も、経済も欲望も増大して争いの規模が大きくなる醜い面もそのまま残されていて、見終わった後にも、心も体もいちばん深いところにずっしり響いてくるような、重厚な番組でした。

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場所&期間&概要

NHKスペシャル 映像の世紀コンサート2019

場所:NHKホール

〒150-8001 東京都 渋谷区 神南2丁目 2番1号

期間:2019年1月30日(水)


ピアノ:加古隆

指揮:岩村力

ナレーション:山根基世

オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団

エイベックス・クラシックス・インターナショナル

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感想です

いろいろ贅沢

私はNHKホールに来たのは今回が初めてです。紅白歌合戦で時々会場外の様子とか映されてますよね。ここかぁ!とテンション上がりました。

舞台中央に巨大なスクリーンが下ろされていて、映像が流されますが、無音です。

スクリーンの下でピアノの加古隆さんと、東京フィルハーモニー交響楽団のオーケストラ、山根元世さんのナレーションを生で合わせていくという…なんとも贅沢すぎる演出です。

大きなスクリーンは演奏者の頭上だし、当然ながら誰も見上げてないし、どうやって演奏のタイミミング合わせてるんだろう?ってちょっと不思議だったんですが、よく見たら指揮の岩村さんの前にも、楽譜と一緒に小さなモニターがあって、映像を見ながら指揮棒をとっておられるようでした。

以前何かの特集で、ディズニーアニメーションは歌やオーケストラの音に合わせてセル画の動きを作っていくから、キャラクター達が生き生きと命を吹き込まれると説明していました。リマスター版を作るにあたり、最新の機材で音楽をまた収録し直そうとしたら、動画に合わせてオーケストラを奏でるのは、タイミングを計るのが非常に困難を極めたとのこと。

音楽は生き物ですから、その時々でゆらぎがあって弾くたびに早さが違うのは当然ですよね。音楽に合わせて映像を編集するより、映像に合わせてあとから音楽を奏でるのはずっとずっと難しい。しかも今回はそれを生公開するわけで。サイレント映画の弁士さんもいまでは貴重な方々ですから、音楽にしたってナレーションにしたって、もの凄い高度で贅沢な神業がステージで繰り広げられていたようです。

スクリーン映像の内容がそもそも濃厚ですっかり引きずり込まれていましたが、歴史的重要人物が登場するカットまでに盛り上がっていく演奏、戦争の爆撃シーンに呼応するかのようにざわめく不協和音パートの嵐、荒れた大地や壊れた街の場面に、静かにゆっくりお腹に響いてくる低音…絶妙すぎるタイミングで、編集された番組視聴しているんじゃなくてそういえばこれ生演奏だったぞと、気づくたびに鳥肌が立つような想いでした。耳と目と頭が忙しいです。

山根さんのナレーションも、淡々としているけど優しくて綺麗で、ほんとうに素敵でした。

全部を伝えて答えを示したり評価を決めつけるのではなく、私たちひとりひとりに考えさせるてくれる、余白やヒントをくれるような、なんだかそんな印象がしました。

以前、NHKのアナウンサーさんで、「ニュースを伝えるときは自分の個性や意見を主張しないで、ニュースが絵ならその額縁になるような、そんなアナウンスを目指しなさい」と先輩から教えられたというエピソードを聞いたことがあって、絵画に例えた表現も素敵だったし、どこまでも謙虚な姿勢がストイックで憧れて、そこだけ印象に残っています。

その女性アナウンサーさんと話していた先輩が誰のことかもちょっと思い出せないのですが、勝手ながらきっと、山根さんのこんな感じの語りのことを目標に言っていたんじゃないかなぁと、ふとぼんやり思い出しました。

映像の世紀コンサート2019プログラム

パリは燃えているか

放送でも歴史が動くその瞬間のシーンに効果的に用いられた、番組テーマ曲です。

今回のコンサートでもオーケストラとピアノソロとで、ぞくぞくするような感覚に襲われました。もう全身に響きました。

『パリは燃えているか』のタイトルの由来は、第二次世界大戦のときのナチス・ドイツが、パリを襲撃しようとした幻の作戦があったことに由来しているそうです。

プログラムを見たとき何回も『パリ燃え』が書いてあって、パリ炎上しすぎじゃない?などと一瞬思ったものの、始まると一気に引き込まれてしまう。

度重なる戦争と人の愚かさと、生きぬいた人々の情熱と勇気と…あれこれ思いを巡らせる、やっぱりこの曲だなぁってなります。

パリは燃えているか =集成= [ 加古隆 ]

ヒトラーが映像に登場した場面でメロディーが最高潮になり、余韻を残したまま休憩を挟み後半のプログラムへ続きます。

「映像は、人間の罪と勇気を照らし出す」 NHKスペシャル『映像の世紀』キャッチコピーより

映像の発信と受信のありかたに問いかける

段々と撮影の場所や対象が広がる映像の黎明期。飛行機の上に立ってまだ誰も見たことのない光景を撮影しようとしていたり、いろんな国の市街地や観光地で、手動の機械をシャカシャカ回して記録撮影をしているのは、ちょっと危なっかしいけど撮ること自体が楽しくってしかたないって感じが伝わってきて、新しいおもちゃに興じている無邪気さがなんだかいいなぁと思いました。

時代は進んで、世界を戦争に導いた指導者達の映像は、確かに英雄のようでした。その後どれだけ残虐なことをしたかの記録もありましたが、映像を効果的に宣伝に使ったひとが力を持つのは今もたぶんそうなんだろうなぁ。

戦争の映像も多かったです。映像の世紀は大きな戦争の世紀でもあるから、避けては通れないんですね。

国の力や武器の強大な効果を見せつける映像から始まりますが、戦争に行くのはロマンでもヒーローでもなく、映し出されたのは劣悪な環境と殺戮。記録映像の上映に殺到した女性達は、出征した恋人や夫・息子がいないかを探し、ベトナムやシリアの戦乱では、映像を見た世論・若者世代が戦争反対をしっかり言えるような時代になってきます。テロ事件が相次ぐ中、国や宗教が違うからと言ってわかり合えない訳じゃないと、目隠しをしたイスラム教徒の若者が街なかでフリーハグをする、わりと最近の動画も紹介されました。

I’M MUSRIM & I TRUST YOU. DO YOU TRUST ME ENOUGH FOR A HUG?

映像は、手軽に個人で撮影して発信できるようになり、世界中でいろいろな声が上がるようになってきたのを改めて実感します。

ナレーションでもあってはっとしたんですが、そういえば今この瞬間も『映像の世紀』真っ只中なんですね。

ちょっと怖いし、情報発信するのもですけどですけど受け取り方も、もっといろいろ考えないとなぁと思います。凄い時代になってしまったものです。

ショッキングな映像もありましたが、最後はいろんな国と時代の人々が、笑っている姿で締めくくられたのがよかったです。

加古さんのピアノ・アンコール

アンコールで加古さんがピアノ・ソロで弾いていた曲がこれまたとても素敵で、気になって調べてみたら『黄昏のワルツ』という加古さん作曲の作品だと思われます。

すこし寂しげで憂いがあるけど、前向きな感じで明るくなっていく綺麗なメロディーで印象的でした。2000年に放送されたNHKのドキュメンタリー番組『にんげんドキュメント』のテーマ曲のようです。

GML5037 黄昏のワルツ/加古隆 作曲 大編成 加古隆作品 吹奏楽アレンジ曲集

お買い物

会場でお買い物すると、ミニサイズのクリアファイルがもらえると知って、ついついお買い上げです。

新・映像の世紀サウンドトラック クリアファイルおまけ

ここの会場に限った話じゃないんですが、ミュージカルでもコンサートでも、ライブ会場の臨時で設置された感ある物販コーナーの混雑って、列の形成ができていなくて残念だったり、レジの人数の少なさとか、なんとか人の流れだけでも改善されないものなんでしょうか…。

無理やり割り込んでくる人もいるわ、喧嘩腰で文句言ってる人もいたりで嫌な思いもして、人間の欲がむき出しになっているごった返しぶり、混雑なんてキライだ!

ここのショップは『パリは燃えているか』のテーマがバックで流れていたんだからね・苦笑、それをお買い求めるんだから争いを好まない紳士淑女でありたいものです。年齢層高めの分別あるはずの客層なのに残念すぎる。平和ボケと言われようが平和がいいです。

寂しげだけど、綺麗な曲

新・映像の世紀オリジナル・サウンド・トラック [ 加古隆 ]

購入したのは『新・映像の世紀』のオリジナル・サウンドトラックです。

映像の世紀完全版2枚組のとも迷いましたが、まずは今回演奏された曲をもっと聞き込みたくて。

タイトルを知らなかった曲もあったので、曲名をかみしめながら、繰り返し聞いています。

新・映像の世紀 オリジナル・サウンドトラック 完全版 [ 加古隆 ]


『シネマトグラフ』のちょっとコミカルでフィルムがせわしなく回っている感じ、そして何かが起こりそうな、一抹の不穏な空気感が好きになりました。リュミエール兄弟の、世界初の実写映画を作った機械の名前が『シネマトグラフ』です。

『未来世紀』『はるかなる王宮』のすこし寂しげだけど、ゆったりしたエレガントな感じが、綺麗でせつなくて素敵です。『はるかなる王宮』はコンサートで貴族社会の最後のほう、ヴィクトリア女王の姿やロシア革命前夜のロマノフ王朝のシーンで流れていて、好きな時代でもあったのでなおさらお気に入りになりました。

ショップでは映像の世紀のDVD全種類や、加古さん作曲の他のアルバム、楽譜の取り扱いもあって人気でした。『パリは燃えているか』、ピアノで弾けたら気持ちよさそうで憧れます。(難しいんだろうなぁ…)

映像も音も、情報量がものすごかったです。素敵なコンサートでした。

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