『新版 幽霊刑事』読み終わりました【読書感想】

新年明けましておめでとうございます。

有栖川有栖『新版 幽霊刑事(デカ)』を読みました。

新書版も実家にあるし、文庫版もいま住んでるところの本棚にあるんですが、新しく収録された短編があると知ってどうしてもどうしても読みたくて。感想です。

新版幽霊刑事と旧文庫版幽霊刑事

向かって左が今回発売された幻冬舎文庫の新版。ミステリフェアの帯が付いています。向かって右がいままでの講談社文庫版です。

旧版(?)と新版の違いって?

帯にもあるとおり、スピンオフの『幻の娘』が収録されています。

短編があるなんて知らなかった!

幽霊刑事の講談社ノベルス版が2002年、文庫版が2003年とあります。2008年に発表された『七つの死者の囁き』っというアンソロジーがあって、それが新版で収録された短編のようです。

『幽霊刑事』の後日談で、主人公は神崎の後輩、早川刑事。これだけでも独立したストーリーで楽しめるのですが、こっそり早川さんが好きだった私としては本当に嬉しいものでした。

幽霊刑事新版 (幻冬舎文庫) [ 有栖川有栖 ]

 

幽霊刑事(デカ) (講談社文庫) [ 有栖川有栖 ]

 

感想です(ネタバレなし)

これまで作家アリスシリーズも学生アリスシリーズも楽しく拝読しているのですが、幽霊刑事はまた別格です。

この1冊で独立しているところが大好きでもあり、もったいないなぁと思いつつもあり。

ストーリーは主人公の刑事・神崎達也(かんざきたつや)が何者かに殺されるところから始まります。消えていなくなる、はずだったのに、現世に留まってしまった。

しかも背後から襲われたので犯人は自分でも分からない。幽霊だから、母親にも妹にも大切な婚約者にも姿も見えないし声も聞こえないもどかしさ。

傷心で職場に舞い戻ったところに、残業していた後輩刑事・早川篤(はやかわあつし)と目線が合ってしまって、こいつ俺のことが見えるのか!とまとわり憑く・・・もといコンビになり、真相の解明に乗り出します。

幽霊やらイタコやら、超常現象が出てくるミステリーなんてナンセンスだと思ってしまわれがちですが、これは間違いなく本格ミステリーです。

(余談ですが、探偵とか警察とか出てきてさんざん煽っといて、オチが神様とか呪いとか魔法とかトンデモで壊す話は、映画でも小説でも本当にやめてほしい・笑)

幽霊の法則が分かるにつれて、知らないはずのことを知っているあの人、すれ違う会話から紐解かれていく推理はわくわくします。

出てくる捜査一課の登場人物たちがみんな魅力的で熱血で、上にも書きましたが早川さんがとくに好きでした。

繊細で、トイレも静かなところじゃないとだめ、先輩刑事の神崎のオバケを最初怖がりながらも協力してあげる根っからのお人好し。

お婆ちゃん譲りのイタコの能力が、よりによってなんで彼に発現しちゃったんだろうと可笑しく同情しつつも、読み終わる頃には、やっぱり早川さんに会えて相棒になれたことが神崎さんにとって本当に救いだったんだなと思えます。

昔読んだ時私よりずっと年上で、今はこっちが年齢追い抜いてることに気づいてちょっと衝撃うけたけど、昔も今も可愛いひとだと思います。

ここからネタバレあり

早川さんは神崎先輩の一件のあと、どうしたんだろう?

須磨子さんと先輩のやりとりの通訳から走って逃げて、須磨子さんも神崎さんも憧れてて好きだし、きっと良心にも苛まれて。

立ち直っているのかな?情熱を失ってひねくれちゃてはいないかな?早川さんのその後は気になっていました。

神崎刑事が光の洪水にのまれて、無になる・・・作者の意向の数ページに渡る「作品の一部です」のアレの、余韻に浸った後から始まる早川さんのストーリー。

買って最初にぱらぱらとこのページがあるのを確かめてニヤニヤしてしまいました。新版でもしっかりあるのがやっぱり嬉しいです。

 

『幻の娘』の舞台は2年後。

死んだらどうなるかについてああだこうだ一人前に語らう女子高生たちを横目に、新しい署で淡々と刑事を続けている早川さんが通り過ぎます。

あの世は「多分、いいところなんだろう。」と前向きな言葉が滲みますがどこか寂しげです。

この作品の世界では幽霊に遭遇するのはかなり少ないようで、この2年早川さんは「透き通ってぼんやり光るひと」には出会っておらず、それきり幽霊とは縁が切れて普通の日常に戻っていたようです。

取り調べ中の被疑者の発言に、被疑者が目撃したのは幽霊だと確信した早川さん。

幽霊がいること・見えることを公言する訳にはいかないし、幽霊を証言や証拠に使うことはできない。孤独な捜査と葛藤が続きます。

「あなたのおかげで僕の生き方が変わりそうだ。どう生きるかが分かった。」

このことを少女の霊に伝えるまで、ずいぶんぐるぐる悩んだのだろうなとうかがえます。

被疑者の証言・潔白を信じて、刑事として真犯人を挙げることが自分の使命だと。

一周回って普通のことじゃないかと言うなかれ、幽霊を見たと言い張る事件関係者を救えるのは、霊能力のあるひとにしかできません。

霊能力を公にはできないけれど、霊の目撃証言や霊自身の証言から、圧倒的に有利に真実に辿り着けるということです。使い勝手は悪いけどねと自虐しますけど、刑事と霊能力を両方生かせる早川さんにしかできないことです。

早川刑事が少女の幽霊と出会った取り壊しされる屋敷の部屋で膝を抱えて、朝まで何を考えていたんだろう。

先輩と別れたときのような感じではきっとなくて、もっと積極的に向きあって、女の子への感謝や決意みたいなのでいっぱいだけど、それでも別れは悲しかったんだと思います。

やっぱり早川さんは優しいです。素敵な短編でした。

少女の霊も達観しているけど恋心はずっとそのままで、とっても可愛らしかったです。有栖川先生の描く女性は強いけど儚げで、素敵です。

早川篤の物語がプロトタイプの怪談集

幽霊刑事のあとがきに、早川さんを主人公にした連載は実現しなかったものの、心霊現象を専門に扱う探偵を主人公にしたシリーズがあると知ってから、角川の『濱地健三郎の霊なる事件簿』も読んでみました。

こちらは短編からなる心霊探偵で、推理ものというより幽霊譚といった感じです。幽霊を現象として淡々と扱うのが印象的でした。

こちらのお話の世界では幽霊遭遇率が少しばかり高いのかな?年齢不詳の濱地健三郎(はまじけんざぶろう)と、おおらかな女性の助手・志摩ユリエ(しまゆりえ)が依頼人の不可思議な現象を読み解いていきます。

濱地探偵がそこそこ年齢と経験を重ねているせいか、終始落ち着いていて、助手の子が霊能力を少しずつ身につけたり成長していく感じでした。

濱地健三郎の霊なる事件簿 [ 有栖川 有栖 ]




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